赤い傘を持って故郷へ帰る。
行きつけの喫茶店を出るとき、
「コレ持っていきな。あんたが今 風邪をひいたらオキニの彩ちゃんが哀しむだろ?」
と、しゃがれた声のママが持たせてくれた傘だ。
新宿駅発長野行きのバスに乗って僕は故郷へと帰ってきた。
意外と遠いとはわかっていたがここまで遠いとは。
田舎の人は意外とせっかちでインターを降りた辺りから荷物を抱えてすでに降りる準備をしている。
「おい、まだ駅前まではいくつかバス停あるからまだ早いよ!」
と僕は心の中で叫んでいた。
それだけ故郷に恋焦がれてたんだろう。
まぁいい、とにかく帰ってきたのだ。
つかの間の休みを利用して。ショートバケーション。いったい誰がバケーションなんていう言葉を日本に持ち込んだのだ?そんな言葉、OL以外誰が使うというのだ。
中略
高校時代、近所のこんにゃく畑にタイムカプセルを埋めたのを思い出した。
さっそくN地区へ向かい、地図に書かれた場所を掘り起こした。
当時埋めたタイムカプセルは、確かにそこにあった。
中から出てきたのは、銀のエンゼル5枚と、「片手でできるモザイクの消し方」と書か
れた一枚の説明書だった。
懐かしい。
17歳の頃の僕は本当にそんなことを信じていたんだ。
見えないものを見るということに、必死になっていたんだ。
今はどうだ?
虚構と現実の違いすら曖昧になってしまっている。何もかも、置き去りにしてはいないか。
ふと耳をすませば、蝉の声が聞こえる。
近くで小川が流れている。
オーケイ!何も変わっちゃいない。ぼくには帰る場所がある。
「おかえりなさい。」
こんにゃくの葉っぱたちが、ぼくに優しく微笑みかけた。
こーへーJAPAN@ららぽ横浜






